影響因子の話

昨日の続きです。

「物理的環境」
これは、感覚の遮断などが有名です。
ICU症候群を例に挙げます。
ICUは夜も明るいところで
機械が多く、点滴のルート(管のこと)
が沢山つながっている状況です。


機械が多いということは、
モニターの音や酸素の音(ボコボコって聞こえるんです)
などが常に聞こえる状況です。


そんな環境にベッドから動けない患者がいます。
自分で自分の体が思うように動かないというのは
とても不安の強い状況です。
そういう不安の強い状況+環境により、
精神病ではなくても、せん妄が出たりします。
この場合のせん妄は、環境が一般病棟に戻れば
100%直ります。


なので、ICUにいて、
意識が朦朧としている患者にこそ
声を掛けたり、マメなケアが
必要になるそうです。


あと、物理的環境が精神に影響を及ぼすものとして
hospitalismや施設症があります。
この二つを区別しないで使われる事もあるようですが、
厳密にはこの二つは違うものだそうです。


施設症というのは、ある一定の場所に
長期間閉じ込められていると
起こる一種の退行現象です。
これは、乳児院や老人ホームなどに
長くいると起こる現象だそうです。
この特徴は出られる段階になっても
出て行く事が出来ないことです。
施設のスケジュール通りにしか動けず
一般の社会にうまく適応できなかったり、
施設のスケジュールと違うと、
どうしていいかわからずパニックに
なったりするものです。


一方、hospitalismは、「患者の病院慣れ」
のようなものです。自らすすんで病院に
居たがります。


自らすすんで居たがるところが、
施設症とは違う点になります。


「心理社会的因子」
これは、家族関係やソーシャルサポートの影響が
大きいです。


特に、家族関係では母親と患者との関係が問題の
中心になりがちです。まぁ、母親に限らず
家族が患者の精神状態を悪化させてしまうことは
しばしば見られます。


例えば、アルコール依存症を例に挙げると、
アルコール依存症は、本人の意思が「止めよう」
と思っても、体が反応してしまいます。
この体の反応というのは、幻覚が見えたり、
不安に襲われたりして、アルコールを飲みたくなります。


アルコールを飲んではいけないと本人が
理解していて、一生懸命我慢する姿を
家族が見ています。そこで


「あぁ、お父さん、もう半年も飲まないで頑張ったから
一口ぐらい飲ませてあげても・・・・。」


と言って家族が飲ませてしまって、
せっかくの今までの努力が全て無駄になるという事が
何例もあるそうです。


また、高EE(high expressed emotion)と業界では
呼ぶようですが、家族が感情的なプレッシャーを
かける事で、症状が悪化したりする事があります。


これは、うつ病の人の症状が
比較的落ち着いてくると
「何故働かないんだ!!」
と攻め立てたりする事です。
また、統合失調症ならば、
その症状が落ち着いてくると


「いつまでも、薬に頼って!!」
と責めたり、
「もう、止めても大丈夫よ!」
と無責任な事を
言ったりして薬を止めさせてはいけないのに、
薬を止めさせてしまうような事です。


家族は精神疾患を抱える患者の一番の
理解者であって欲しいのですが、現実は
なかなか難しいようです。


また、精神疾患を持つ人は、ソーシャルサポートが
少ないという問題があります。
一般にソーシャルサポートが多ければ多いほど
生きて行くのが楽だといわれています。


ソーシャルサポートとは、簡単に言うと
自分のために、何かをしてくれる存在です。
この何かというのは、別に大きな事でなくていいんです。


「自分が風邪を引いたときに、
授業のノートを貸してくれる人」
程度で十分なんです。


このわずかな力を貸してくれる存在がいないと、
実社会では、追い詰められ易くなってしまいます。


ということで、明日は精神の健康に影響を及ぼす因子の
最終回になる予定です。